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2015年秋アニメ(1) 日常系アニメの進化

2015年秋アニメの日常系作品は、ゆるゆり さん☆ハイ(3期)、ご注文はうさぎですか??(2期)。
これに、年末の特番として放送された、WORKING!!! 最終回スペシャル、普通の女子高生が【ろこどる】やってみた OVAクリスマススペシャル、が加わる形。

これら4作、いずれも楽しめるもので、成功だったと思う。

ゆるゆり、3期目にして原点回帰


ゆるゆり3期は、1〜2期と監督、制作会社が交代した劇場版を引き継ぐもの。
1〜2期に見られた、過剰な"あかりいじり"を廃したのが最大の特徴。ゆるかったりガチだったりする百合関係の中で、あかりは唯一のゼロポイント、という立ち位置に戻した。
導入から中盤までは、これまでの人物関係という資産を大切にしながら、むしろそれまであまり見られなかったカップリングを、優しい画風で楽しく描く。終盤でやっと、生徒会メンバーやごらく部という原点に戻り、珍しくも殊勝な歳納京子で締める。
この卓抜な構成に加えて、小声の生徒会長をサイレントムービー仕立てで見せるなど、映像音響面での工夫も凝らされ、劇場版ゆるゆりで見せたやわらかい楽しさを大幅に拡張、実に魅力的な世界になった。

何より大きいのは、映像的な工夫が、劇場版での夏合宿を経て、より親密さを増したキャラの関係性の深化に費やされていたこと。表情の豊かさ、所作のかわいさを、存分に味わいながら、仲良くなったメンバーが、より互いを楽しもうとする様を見ることができた。
日常の所作にこそカロリーを食う作画を、というテーゼを、かなり忠実に守った作風だ。もしかすると、劇場版からスタートした、という蓄積が、大きかったのかもしれない。

こうしたチューニングで、より原作に沿った雰囲気になったのも、この3期の特徴。私は1〜2期のトリッキーな展開も好きだが(特に2期の終盤はすごかった)、原作の持つ人間関係への優しい視点をきっちり絵にしてきた本作は、シリーズを最高潮に持っていけた、とも思っている。

■ごちうさ、2期目の深化


ご注文はうさぎですか??(ごちうさ2期)もまた、1期で出てきた高校生四人と、中学生三人のチマメ隊が、より親密になっていく過程を、全編の背骨に据えていた。
1期で高校生同士、中学生同士は仲良くなっている。相互に七人が、学校や年齢差を超えて仲良くなる、というのは珍しいかもしれない。
その動きを加速する仕掛けのように、中盤でココアの姉、モカが襲来して、皆の心を鷲掴みにする勢いが楽しい。このことは、下宿生活を経て、ココアの変わらなかった部分と、変わっていく部分を示す、外部の目としても働く。渦中にいる人にはわかりにくい変化を、外からの目でそっと描くことで、すっとこどっこいなwココアが、おねえさん然としてきていることを、視聴者とともに確認する。

また、チマメ隊を通じて、高校生ってどんなだろうと想像する中学生も描かれる。卒業してどんな高校生活になるかを、親しくなっていく四人組を観察しながら。
こうした動きは、カフェのオーナーとしてチノ、少し大人びた言動をするチノが、ココアに対して年相応の感情を表す関係に変化することも促す。
最終話、チノがココアに対して、初めてちゃんと、身近な人間としての怒りをぶつける。
この時の、ココアの喜ぶ顔と、戸惑うチノ。頭がおかしいんじゃないかと思うくらい、甘く優しい関係を描いてきた本作にしかできない表現だ。

美しい画面構成と、緻密で適切な所作から、皆がより親密になっていく表情、空気感が伝わる。喫茶店ラビットハウスという枠はそのままに、より広く街ぐるみで親しい間柄になっていく。
変化を寿ぐ(ことほぐ)のは、2期の大事なテーマだったと見受けた。

■微妙に変わっていく日々だからこそ、それを受け容れる


肝心なのは、同じ状態が続くから安心して関係を継続できるのではなく、変化を感じながら、互いにそれを肯定して受け容れること。
もちろん、このことは、日常系というジャンルを押し上げた、けいおん!や、らき☆すたでも描かれてはいた。けいおん!は特に軽音楽部という部活を取り上げたため、学年が上がり、経験を重ねるにつれて生じる変化を、卒業というイベントに向けて細かく描く。それでも、何が好きで大切に思うかは変わらない、そこだけは外さない。多くの人々を惹きつけた所以だ。

ゆるゆり3期、ごちうさ2期は、節目としてのイベントよりも、学校や地域に根ざした関係の深化を描く。上質で美麗な作画と卓抜な日常所作を通じてさりげなく、それぞれの変化や戸惑いを肯定し合う姿が前面に出る。
近年の日常系アニメの集大成、とも言える内容と感じた。

日常系は物語性が希薄、と言われる。
しかし、いわゆる「大きな物語」がないことは、変化がなく、成長もないことを意味するわけではない。
中学高校、それぞれ3年間という限られた時間の中で、変わっていかざるを得ない若者という存在。若さとは速さであり、反応や変化が速く激しい。
そんな中で、変わらず胸に残るコトをどう描くか。

ゆるゆり3期、ごちうさ2期は「変化を受け容れること、だからこそむしろ変わらずにいられる関係」を描いた。卒業や学園祭という大きなイベントに頼ることなく。
これは大きな収穫だろう。

OVA 2本の、スペシャルなイベントと日常


WORKING!!!(!が3本で3期目)は2015年上半期に最終回を迎え、テレビシリーズの終わりとなった。
しかし、小鳥遊くんといなみちゃんの恋はどうなったのか、という最後のテーマは残されたまま。それを60分スペシャルで描いたOVA
相変わらずのコメディだが、小鳥遊くんの母や家族との関係や位置を再確認しつつ、いなみちゃんが相思相愛を本物にする過程を、アドベンチャーゲーム仕立てにする。しかし、艱難辛苦で試すというよりむしろ、いなみちゃんを応援するように背中を押す小鳥遊家姉妹たち。母というラスボスwに対峙せざるを得ない彼女を迎える姿勢の、おかしさと暖かさ。
3期の掉尾を飾るに相応しい好編で、テレビシリーズではお預けになった、本当の大団円を描いた。
3期すべて監督が違うシリーズとなったが、どの期もそれぞれ面白い、という珍しいシリーズになったのも、大きな特徴。

一方、ろこどる。高校生がたまたまろこどるになる機会を得て、それを自分らしく活かしていく好編だったが。
クリスマススペシャルでは、いつも引っ張ってくれる縁さんに、奈々子がクリスマスと誕生日を兼ねた楽しい時間を持てるよう動く。
テレビシリーズとは少し異なり、縁視点が減る分、百合的要素も後退する。しかし、そこは手練れのスタッフ達。奈々子の友人たちとの交流も含め、誰かが誰かを喜ばせようとするのがクリスマス、と言わんばかりの、楽しいやりとり。
ろこどるを初めて、まだ1年経っていない二人は、普通の生活ではなかなか得られない濃い体験を重ねてきたが、高校生としての楽しい体験こそが今大切なものであることもまた事実。アイドルものではありながら、日常に接地する描写をふんだんに用意することで、より親密な感情の動きがあり、見ている側との親密さも増すような運び。
クリスマススペシャルだからこそ、いつもの仕事ではないシーン。それは視聴者にとってのプレゼントでもあったはず。

どちらも、スペシャルな機会を捉える際に、日常に根ざすところが、面白い。
ゆるゆり3期やごちうさ2期とは逆の方向ではあるが、これらもまた、広い意味で日常系作品の深まり、進化につながっていると感じた。

2016年冬アニメは、日常系アニメがない、珍しいシーズンになる。その前に、豊かな花園を広げたような秋アニメだった、と思う。